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東京高等裁判所 平成10年(行ケ)222号 判決 1999年2月24日

東京都豊島区東池袋3丁目1番1号

原告

株式会社西友

代表者代表取締役

渡邊紀征

訴訟代理人弁理士

峯唯夫

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官 伊佐山建志

指定代理人

上村勉

小林和男

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1  当事者の求めた判決

1  原告

特許庁が、平成9年異議第90125号事件について、平成10年6月8日にした商標登録異議の申立てについての決定を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

2  被告

主文と同旨。

第2  当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

原告は、平成7年10月13日、別紙1に表示した構成よりなる商標(以下「本件商標」という。)につき、指定商品を商標法施行令別表(以下「施行令別表」という。)による第9類「模型及び標本、基本単位計量器、誘導単位計量器、ヒューズ、電池、電圧計、電流計、電力計、電線及びケーブル、写真機械器具、映画機械器具、光学機械器具、眼鏡、加工ガラス(建築用のものを除く。)、救命用具、電気通信機械器具、レコード、メトロノーム、電子応用機械器具、オゾン発生器、電気アイロン、電気式ヘアカーラー、電気式ワックス磨き機、電気掃除機、電気ブザー、乗物の故障の警告用の三角標識、火災報知機、盗難警報器、事故防護用手袋、消火器、自動車用シガーライター、保安用ヘルメット、防火被服、防じんマスク、映写フィルム、スライドフィルム、スライドフィルム用マウント、録画済みビデオディスク及びビデオテープ、ガソリンステーション用装置、自動販売機、金銭登録機、硬貨の計数用又は選別用の機械、作業記録機、写真複写機、手動計算機、製図用又は図案用の機械器具、タイムスタンプ、タイムレコーダー、電気計算機、パンチカードシステム機械、票数計算機、ビリングマシン、郵便切手のはり付けチェック装置、計算尺、ウエイトベルト、ウエットスーツ、浮き袋、エアタンク、水泳用浮き板、レギュレーター、潜水用機械器具、家庭用テレビゲームおもちゃ、軍動式扉自動開閉装置」として、商標登録出願(商願平7-104969号)をし、平成9年6月6日に設定登録(登録第4007020号)を受けた。

フランコテユープーポスタリア アクチエンゲゼルシャフト ウント コンパニー(以下「異議申立人」という。)は、平成9年10月13日、本件商標の指定商品中「基本単位計量器、誘導単位計量器、電気通信機械器具、電子応用機械器具、金銭登録機、硬貨の計数用又は選別用の機械、作業記録機、写真複写機、手動計算機、製図用又は図案用の機械器具、タイムスタンプ、タイムレコーダー、電気計算機、パンチカードシステム機械、票数計算機、ビリングマシン、郵便切手のはり付けチェック装置、計算尺」について、本件商標の登録異議の申立てをした。

特許庁は、同申立てを平成9年異議第90125号事件として審理したうえ、平成10年6月8日、「登録第4007020号商標の指定商品中『基本単位計量器、誘導単位計量器、電気通信機械器具、電子応用機械器具、金銭登録機、硬貨の計数用又は選別用の機械、作業記録機、写真複写機、手動計算機、製図用又は図案用の機械器具、タイムスタンプ、タイムレコーダー、電気計算機、パンチカードシステム機械、票数計算機、ビリングマシン、郵便切手のはり付けチェック装置、計算尺』についての登録を取り消す。」との決定(以下「本件決定」という。)をし、その謄本は、同年7月1日、原告に送達された。

2  本件決定の理由

本件決定は、別添決定書写し記載のとおり、別紙2に表示した構成よりなる登録第3269592号商標(指定商品施行令別表による第9類「測定機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具及びその部品、写真複写機、電気計算機、郵便切手のはり付けチェック装置、計算尺」、平成5年10月15日登録出願、平成9年3月12日設定登録、以下「引用商標」という。)を引用し、本件商標と引用商標とは、外観上類似する商標であり、上記登録異議の申立てがされた指定商品は、引用商標の指定商品に含まれている商品と同一又は類似の商品であるから、本件商標登録は、商標法43条の3第2項の規定に基づき取り消すべきものとした。

第3  原告主張の本件決定取消事由の要点

1  本件決定は、本件商標と引用商標との外観の類否判断を誤り、その結果、誤った結論に至ったものであるから、違法として取り消されなければならない。

2  取消事由

(1)  本件決定は、「本件商標を構成する図形と独立した識別標識部分とみられる引用商標中の図形部分は、共に欧文字のFとPを結合させデザインしたものと容易に理解されるものであって、その全体の形が極めて似ており、濃淡の差異をもってFとPの部分を表している点においても共通している。そして、本件商標を構成する図形と引用商標中の図形部分は、商標権者が主張するような構成の差異はあっても、前記した共通性があるため、その外観全体から受ける印象は極めて近いといえるし、時と処を異にして接する場合、そのFとPの部分の濃淡がどちらであったかまで記憶していないのが、むしろ普通とみられるものである。そうすると本件商標と引用商標とは、外観において紛らわしく、類似する商標といわざるを得ない。」(決定書7頁5~18行)と判断したが、誤りである。

(2)  本件商標を構成する図形と引用商標中の図形部分(以下「引用商標図形」という。)とは、いずれも欧文字のFとPを横方向に結合して一体化したモノグラムである。この種のモノダラム商標においては、類否判断は、モチーフとなった文字の共通性によるのではなく、具体的な構成態様によってなされるべきである。すなわち、本件商標と引用商標とがいずれも欧文字のFとPとをデザイン化したものであることは、類似を決定づける要因とすべきではない。

そして、本件商標と引用商標図形とは、その構成態様上、次のような差異がある。

ア 本件商標では、Fが黒の乗せ文字、Pが黒の輸郭を有する白抜き文字で、明白なコントラストをもって表されるのに対し、引用商標図形では、Fが黒色梨地状(ハーフトーン)の影付き文字、Pが黒色文字で表される。

イ 本件商標では、乗せ文字のFに抜き文字のPの輪郭線をつなげて結合しているのに対し、引用商標図形では、Fの一部とPの一部とが重なり合って、各構成要素の一部を共有する。

ウ 本件商標では、Fの空白部分(2本の横線の間の部分)とPの空白部分(縦線と右側ループ部とで囲まれた部分)がそれぞれ独立し、前者は横長長方形、後者は縦長長方形で表されているのに対し、引用商標図形では、Pの縦線が上部で省略され、Fの空白部分からPの空白部分にわたって連続した長いスリットを形成している。

エ 本件商標では、Pのループ部が半円状に表されているのに対し、引用商標図形では、Pのループ部が横長楕円状に表されている。

オ 本件商標では、Pの縦線がモノグラム全体の左右方向のほぼ中央にあり、短く表示されているのに対し、引用商標図形では、Pの縦線がモノグラム全体の左右方向の左側に寄ってFの縦線に近接し、長く表示されている。

そして、上記ア、イ、ウの差異により、本件商標では、FとPとが並列し、それぞれの独立性が高いとの印象を与えるのに対し、引用商標図形では、Fの背後にPが隠れているように見え、Fの文字部分からPの文字部分にわたる長いスリットによってFとPとの一体性が強いとの印象を与える。また、上記エ、オの差異により、全体として観察したときに、本件商標では重心が低く、どっしりした印象の図形という印象を与え、引用商標図形では、重心が高く横長で軽快感のある図形という印象を与える。

したがって、本件商標と引用商標図形の与える印象は全く異なり、離隔的観察によってもこれらを混同するということはない。

なお、審決例中には、構成の細部における差異を考慮して商標の類否判断を行い、非類似と判断したものが存在する(甲第10~第15号証)。

(3)  異議申立人は、引用商標の商標権を有するものであるが、他にこれと同一の構成よりなる登録第3271635号商標(指定商品施行令別表による第16類「紙類、文房具類、あて名印刷機、印字用インクリボン、自動印紙はり付け機、事務用封かん機、消印機、謄写版、郵便料金計器」、平成5年10月15日登録出願、平成8年10月24日設定登録、以下「対比商標」という。)の商標権を有している。

原告は、本件商標のほか、これと同一の構成よりなる別表の符号A~D記載の各商標(以下、同表の符号に従って「原告商標A」等という。)につき商標登録出願をしたところ、それぞれ異なる審査官の担当した審査の過程で、原告商標A及び同Cについては対比商標と、原告商標Bについては引用商標と、それぞれ類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるとする拒絶理由通知を受けたが、いずれも意見書の提出後設定登録に至り、また、原告商標Dについても設定登録に至っている。

この点につき、本件決定は、「これらの登録例のうち、登録第4076401号(注、原告商標A)、第4076402号(注、原告商標B)及び第4102090号(注、原告商標C)は、審査において非類似と認定されたとする他人の登録商標と、その指定商品が非類似の関係にあると認められる。そして、これ以外の登録例(注、原告商標Dを含む。)については、いかなる商標との比較で審査において非類似としたか明らかにされていでない。」(決定書6頁22行~7頁2行)と認定した。

しかし、原告商標Aの指定商品中「謄写版用インキ、絵の具」は、引用商標の指定商品中「計算尺」及び対比商標の指定商品中「文房具類」に類似し、原告商標Bの指定商品中「自動スタンプ打ち機」は、引用商標の指定商品中「写真複写機、電気計算機、郵便切手のはり付けチェック装置」及び対比商標の指定商品中「あて名印刷機、印字用インクリボン、自動印紙はり付け機、事務用封かん機、消印機、謄写版、郵便料金計器」に、原告商標Bの指定商品中「家庭用電気洗濯機、電気ミキサー」は、引用商標の指定商品中「電気通信機械器具」に含まれるテレビジョン受信器などに、それぞれ類似し、原告商標Cの指定商品中「布製ラベル」は、対比商標の指定商品中「文房具類」に類似するから、原告商標A、同B及び同Cについて「審査において非類似と認定されたとする他人の登録商標と、その指定商標が非類似の関係にあると認められる」とした本件決定の認定は誤りである。また、原告商標Dの指定商品中「防虫紙」は、対比商標の指定商品中「紙類」に類似するから、対比商標との比較で商標自体が非類似とされたものと認められ、本件決定の「いかなる商標との比較で審査において非類似としたか明らかにされていない」との認定も誤りである。

そして、このように、本件商標と同一の構成の原告商標A~Dと、引用商標又はこれと同一の構成の対比商標とが、それぞれ類似する指定商品を含み、しかも原告商標A~Cについては拒絶理由通知がなされたにもかかわらず、意見書の提出を経て、それぞれ異なる審査官によって、非類似の商標と判断されたことは、本件においても先例として尊重されるべきである。

被告は、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とが同一の商品を多く含む関係にあるのに対し、原告商標A~Cが引用商標又は対比商標と指定商品について類似商品を一部含む関係であるから、商品の出所の混同を生じるおそれは、原告商標A~Cと引用商標又は対比商標との場合よりも、本件商標と引用商標との場合の方が大きいと主張するが、商標法4条1項11号によれば、商標が同一又は類似であれば、「類似商品を一部含む関係」であっても出願は拒絶されるのであるから、原告商標A~Cは高標が非類似と認定されて設定登録に至ったことが明らかである。

(4)  本件商標は図形のみからなるのに対し、引用商標は、引用商標図形の下部に「FRANCOTYP-POSTALIA」との欧文字が配されており、商標全体の外観は、図形部分と文字部分との結合である。このような図形と文字の結合商標において、図形部分のみ重視して、文字部分を軽んじることは許されない。文字部分を含めた引用商標は、「FRANCOTYP-POSTALIA」のマークと認識されるものである。

これに対し、原告は、本件商標を個別商品の標章ではなく、量販店「フードプラス」のロゴマークとしてのみ使用するものであり、具体的な使用態様は、店舗における看板への表示、ショッピング袋への表示、包装紙への表示、広告チラシへの表示など、店舗名の表示として必要な限度に限られているから、取引者・需要者は本件商標を「フードプラス」という名称の店(販売場所又は販売者)の識別標識として認識、理解し、個別的な商品の識別標識として認識、理解することはない。

そして、本件商標が使用される地域は「フードプラス」店舗の所在地周辺に限られ、同店舗が食料品を中心とする量販店であり、広告チラシが頻繁に配布されることなどから、該地域の需要者には、本件商標が周知著名であって、本件商標と引用商標とに係る程度の差異であっても敏感に反応し、混同することはないから、この点からも、本件商標は引用商標と非類似とされるべきである。

第4  被告の反論の要点

1  本件決定の認定・判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。

2  原告主張の取消事由について

(1)  本件商標と引用商標図形は、共にほぼ同じ大きさの欧文字のFとPとを、Fを左に、Pを右に配置した構成で結合させてデザインとしたものと容易に理解されるものであって、その組合せ方にも大差はなく、その全体の形が極めて似ており、また、FとPの各欧文字が、白、黒又は黒色の梨地(灰色)の濃淡(明暗)の差異をもって明らかに見分けられる点においても共通する。

このような共通点があるために、本件商標と引用商標図形の外観全体から受ける印象は極めて近く、また、本件商標と引用商標に時と処とを異にして接する場合、需要者は、そのFとPの部分の細部の差異や、F、Pの各欧文字が濃淡(明暗)のいずれであったかまで記憶していないのが通常である。

なお、原告は、本件商標と引用商標とがいずれも欧文字のFとPとをデザイン化したものであることは、類似を決定づける要因とすべきではないと主張するが、両商標は共に欧文字のFとPを結合しデザインしていることにより、その全体の形が極めて似たものとなっており、いずれも需要者に欧文字のFとPとをデザインしたものと理解・記憶されるのであるから、本件において、欧文字のFとPを結合しデザインしたことは、商標の類否判断に関係する1要素であることが明らかである。

そうすると、本件商標と引用商標とは外観において紛らわしいものであり、同一又は類似する商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生じるおそれがあるから、類似する商標というべきである。

原告は、その主張に係る本件商標と引用商標図形との差異に基づいて、本件商標では、FとPとが並列し、それぞれの独立性が高いとの印象を与えるのに対し、引用商標図形では、Fの背後にPが隠れているように見え、Fの文字部分からPの文字部分にわたる長いスリットによってFとPとの一体性が強いとの印象を与えるとか、本件商標では重心が低く、どっしりした印象の図形という印象を与え、引用商標図形では、重心が高く横長で軽快感のある図形という印象を与える等と主張する。しかし、上記のとおり、本件商標と引用商標図形の外観全体から受ける印象は極めて近く、独立性又は一体性に顕著な差異があるとはいえないし、横方向の長さや重心の違い等もほとんど認識することはできない。

なお、原告は、構成の細部における差異を考慮して商標の類否判断を行い、非類似と判断した審決例(甲第10~第15号証)が存在すると主張するが、これらの審決例は、本件商標及び引用商標図形と構成態様が全く異なる商標の間の類否に関する事案であって、本件とは事案が異なるものであるのみならず、これらの審決例において、比較対象の商標中にあって差異があるとされている構成部分は、その差異により比較対象の商標が見る者に異なって印象され、又は著しく構成が異なる商標となっているとされているから、商標の細部というべき部分とはいえないものであって、本件に適切な例ではない。

(2)  異議申立人が引用商標及びこれと同一構成の対比商標の各商標権を有すること、原告が本件商標のほか、これと同一構成の原告商標A~Dの商標登録出願をし、それぞれ設定登録に至ったこと、原告商標A~Cは、引用商標及び対比商標との関係で、その指定商品中に原告主張の類似する商品を一部含んでいることは認める。

しかし、本件商標については登録異議の申立てがなされ、原告商標A~Dについては同申立てがなされなかったところ、登録査定に瑕疵があればこれを是正する登録異議申立制度の趣旨に則れば、本件商標と引用商標との類否判断は、原告商標A~Dについて設定登録がされたからといって、これにこだわることなく行われるべきである。また、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは、同一の商品を多く含む関係にあるのに対し、原告商標A~Cは、引用商標又は対比商標と、指定商品について同一商品を含む関係にはなく、類似商品を一部含む関係であるにすぎないから、使用される商品という面からみて、出所の混同を生じるおそれは、原告商標A~Cと引用商標又は対比商標との場合よりも、本件商標と引用商標との場合の方が大きい。

(3)  原告は、引用商標において、引用商標図形の下部に「FRANCOTYP-POSTALIA」との欧文字が配されていることを取り上げ、このような図形と文字の結合商標において、図形部分のみ重視して、文字部分を軽んじることは許されないと主張するが、本件決定は、引用商標中に文字部分があることを考慮したうえで本件商標と引用商標との類否判断をしたものであって、原告の主張は当たらない。

また、原告は、原告が本件商標を量販店「フードプラス」のロゴマークとしてのみ使用し、同店舗が食料品を中心とする量販店であり、広告チラシが頻繁に配布されることなどから、該地域の需要者には、本件商標が周知著名であって、本件商標と引用商標とを混同することはないと主張するが、本件商標が周知著名な商標と認めることは困難であるから、原告の主張は前提を欠くものである。

第5  当裁判所の判断

1  原告の取消事由について

(1)  本件商標は、別紙1に表示したとおり、欧文字のFとPとを組み合せて図形化した構成よりなるものである。他方、引用商標は、別紙2のとおり、欧文字のFとPとを組み合せて図形化した部分(引用商標図形)と、その下段の「FRANCOTYP-POSTALIA」の欧文字を横書きした部分とからなるものであるが、引用商標図形が上段を占め、その相対的な大きさが下段の欧文字部分のおよそ7~8倍であるその構成態様からみて、引用商標図形が独立して自他商品識別標識としての機能を有し、かつ、引用商標の識別力の中心をなすものであることが明らかである。

そこで、外観について、本件商標と引用商標中の引用商標図形とを対比すると次のとおりである。

ア 本件商標と引用商標図形とは、ともに、ほぼ同大で、かなり肉太のFとPの各大文字体を、Fを左側、Pを右側に配置し、横方向に結合して一体図形化したものであるが、FとPの各文字は概ねその文字の形を留めており、かつ、本件商標は、Fの部分が黒色に、Pの部分が黒色の輪郭線を有する白色(文字そのものの形状としては白抜き文字であるが、文字が図形化されたものであるから、白色の配色がなされ、周囲と紛らわしい故に輪郭線が付されたものと見るのが自然である。)に色分けされ、また、引用商標図形は、Fの部分が黒色梨地状で灰色ががって見え、また黒色の影を付してあり、Pの部分が黒色であるというように色分けされていることから、いずれも欧文字のFとPの各文字を図形化したもので構成されていることが、一見して明瞭に認識できるものである。

イ 細部の形状に関しては、本件商標においては、Fの2本の横線が同じ長さで、ともにPの左側縦線の左側輪郭線に突き当たり、該Fの2本の横線、Fの左側縦線及びPの左側縦線で囲まれた部分が横長の長方形を形成し、また、Pの左側縦線と右側ループ部で囲まれた部分が縦長の長方形(但し、その横幅が輪郭線の太さとほぼ等しく、これと同じ黒色をしている。)を形成するのに対し、引用商標図形においては、Fの2本の横線がやはり同じ長さをしているが、Pの左側縦線の上に、その横幅の半分近くまで重なっており、これに伴ってFとPのそれぞれの縦線の間隔が接近し、かつ、Pの縦線のFの2本の横線の間隔に相当する高さの部分が横断的に欠けていて、Fの2本の横線の間隔が、Pの右側ループ部の内側にまで連続し、FからPにかけてかなり狭小なスリットを形成している。また、Pの右側ループ部が、本件商標ではほぼ半円形をしているのに対し、引用商標図形では横長の半楕円形をしており、さらに、F、Pの縦線のうちのFの下側横線及びPの右側ループ部よりそれぞれ下の部分の縦線全体に対する長さの割合が、本件商標の方が引用商標図形よりも相対的に短くなっている。

しかして、本件商標と引用商標図形は、前示アのとおり、一見して看者の目を引く基本的構成要素に顕著な共通性があるために、その外観全体から直ちに受ける印象は著しく似通ったものであり、全体形状が極めてよく似ているものといわざるを得ない。前示イのとおり、本件商標と引用商標図形の細部の構成態様には差異が存在し、そのため仔細に観察した場合には、例えば、本件商標ではFとPとが平面的に結合しているのに対し、引用商標図形ではFが前面に、Pが背後にあるというような印象を受けるのは確かではあるが、そのような印象は、外観全体から直ちに受ける印象をさほど減殺するものではなく、迅速を重んじる商取引の場においては、明瞭に意識されるものとは認め難い。

もっとも、本件商標と引用商標とに同時に接した場合には、FとPの色分けにおいて、色の濃い黒色が、本件商標では左側のF、引用商標図形では右側のPに配されている点、及び他方の文字の配色が本件商標では白色、引用商標図形では灰色がかって見える黒色梨地状である点は、直ちに認識され得るものと認められる。しかし、いずれも黒から白への単調な濃淡の相違であり、かつ、F又はPの各文字とそれぞれの色とが必然的な関連性によって結び付いている訳ではないから、通常は各々の商標におけるF及びPの部分をその配色と結びつけて記憶するに至り難いことは経験則上明らかである。結局、当該差異も、時と処を異にして各商標に接した場合に、これらを識別する要素となり得るとはいい難い。

そうすると、本件商標と、引用商標において独立した自他商品識別標識としての機能を有し、引用商標の識別力の中心である引用商標図形とは、その外観において類似するものであり、そうであれば、本件商標と引用商標とは外観において類似するというべきであって、以上と同旨の判断の下に「本件商標と引用商標とは、外観において紛らわしく、類似する商標といわざるを得ない。」(決定書7頁17~18行)とした本件決定に誤りはない。

なお、原告は、モノグラム商標においては、類否判断は、モチーフとなった文字の共通性によるのではなく、具体的な構成態様によってなされるべきであるとして、本件商標と引用商標とがいずれも欧文字のFとPとをデザイン化したものであることは、類似を決定づける要因とすべきではないと主張するが、モノグラム商標であっても、そのモチーフとなった文字を認識することができ、かつ、その文字や配置等が同一又は類似する場合には、商標の類否判断に影響を及ぼすことが明らかであるところ、前示のとおり、本件商標と引用商標図形とは、これに接する者が、いずれもFとPの欧文字を、Fを左側、Pを右側に配置して結合し、一体図形化して構成したものであると明瞭に認識し得ることにより、その外観全体から受ける印象が著しく似通ったものとなるのであるから、本件商標と引用商標図形において、ともに欧文字のFとPとをデザイン化したことが、商標の類否に重大な影響を与えていることは明らかであり、原告の主張は採用し難い。

また、原告は、審決例中には、構成の細部における差異を考慮して商標の類否判断を行い、非類似と判断したものが存在すると主張する。しかして、原告の引用する甲第10~第15号証は、いずれも、図形よりなる2個の商標(あるいは図形と文字からなる商標のうちの独立識別標識部分である図形部分)を対比し、構成上の差異がある故に外観上相紛れるおそれがないものと判断した審決例であるが、当該各事案においては、本件におけるように、両商標が、同一の複数の文字を同じ配置で結合して一体図形化した構成であり、かつ、それぞれそのことを明瞭に認識し得ることにより、その外観全体から受ける印象が著しく似通っているという事情がある訳ではなく、したがって、該各審決例と本件とは、商標の類否判断の要素に相違があって、事案を異にするものといわざるを得ず、該各審決例における認定判断と、前示の本件商標と引用商標とは外観において類似するとの認定が齟齬するものではない。

(2)  異議申立人が引用商標及びこれと同一構成の対比商標の各商標権を有すること、原告が本件商標のほか、これと同一構成の原告商標A~Dの商標登録出願をし、それぞれ設定登録に至ったこと、原告商標A~Cは、引用商標及び対比商標との関係で、その指定商品中に原告主張の類似する商品を一部含んでいることは当事者間に争いがなく、また、甲第5~第7号証の各1~3及び弁論の全趣旨によれば、原告は、原告商標A~Cの審査の過程で、原告商標Aについては対比商標等と、同Bについては引用商標と、同Cについては対比商標と、それぞれ類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるとする拒絶理由通知(第5~第7号証の各3)を受けたことが認められる。これに対し、原告商標Dについては、その指定商品中「防虫紙」が、対比商標の指定商品中「紙類」に類似することが認められるが、原告商標Dの審査の過程で、対比商標との類否が問題とされたことを認めるに足りる証拠はない。

そうすると、本件決定の「これ以外の登録例(注、原告商標Dを含む。)については、いかなる商標との比較で審査において非類似としたか明らかにされていでない(注、「されていない」の誤記と認められる。)。」(決定書7頁1~2行)との認定に誤りがあるとはいえないが、「登録第4076401号(注、原告商標A)、第4076402号(注、原告商標B)及び第4102090号(注、原告商標C)は、審査において非類似と認定されたとする他人の登録商標と、その指定商品が非類似の関係にあると認められる。」(同6頁22~末行)との認定は、原告主張のとおり、誤りである。

しかして、原告は、本件商標と同一の構成の原告商標A~Dと、引用商標又はこれと同一の構成の対比商標とが、類似する指定商品を含み、しかも原告商標A~Cについては拒絶理由通知がなされたにもかかわらず、意見書の提出を経て、それぞれ異なる審査官によって、非類似の商標と判断されたことは、本件においても先例として尊重されるべきであると主張する。

しかしながら、商標の登録異議の申立ては、商標登録が、商標法4条1項11号を含む所定の規定又は条約に違反してなされたことを理由としてなされ(同法43条の2)、その申立てに理由があるときは商標登録を取り消す旨の、理由がないときは商標登録を維持すべき旨の決定がなされる(同法43条の3第2、3項)ものであり、かつ、その審理及び決定は、3人又は5人の審判官の合議体が行う(同条1項)ものである。すなわち、登録異議の申立ては、審判官の合議体による審理判断によって、審査官による商標の登録査定に瑕疵があればこれを是正することを制度趣旨とするものであるから、かかる制度趣旨や判断主体の相違等に鑑みて、登録異議の申立てに対する決定において示されたその申立ての理由に係る事項(例えば、当該登録商標がその出願の日前の出願に係る他人の登録商標と類似するかどうか)についての判断と、登録査定の前挺としてなされた該事項と同一又は類似する事項についての審査官の判断とを同列に置いて論ずることはできないものというべきであり、その趣旨で、本件において審査官による判断が先例として尊重されるべきであるとする原告の主張は、これを採用することができない。

(3)  引用商標が、引用商標図形とその下段の「FRANCOTYP-POSTALIA」の欧文字を横書きした部分からなるものであることは前示のとおりであるところ、原告は、引用商標全体の外観は、図形部分と文宇部分との結合であり、図形部分のみ重視して、文字部分を軽んじることは許されないとか、文宇部分を含めた引用商標が「FRANCOTYP-POSTALIA」のマークと認識されると主張するが、引用商標の構成態様からみて、引用商標図形が独立して自他商品識別標識としての機能を有し、かつ、引用商標の識別力の中心をなすものであることも前示のとおりであって、そうであれば、本件商標と引用商標図形とを対比し、それが外観において類似することにより、本件商標と引用商標とが外観において類似するものとした本件決定の判断に誤りはないものというべきである。

また、原告は、本件商標を個別商品の標章ではなく、量販店「フードプラス」のロゴマークとしてのみ使用するから、取引者・需要者は本件商標を「フードプラス」という名称の店の識別標識として認識、理解し、個別的な商品の識別標識として認識、理解することはないとか、「フードプラス」店舗の所在地周辺地域の需要者には、本件商標が周知著名であって、本件商標と引用商標とに係る程度の差異であっても敏感に反応し、混同することはない等と主張する。そして、甲第17~第19号証及び弁論の全趣旨によれば、原告は、「フードプラス」店舗の買い物袋(甲第17号証)、包装紙(甲第18号証)、広告チラシ(甲第19号証)に、「FOODPLUS」又は「フードプラス」の各文字を伴った態様で本件商標を付して使用していることが認められるが、かかる事実から直ちに本件商標を「フードプラス」店舗のロゴマークとしてのみ使用するとの事実を推認することはできないのみならず、本件商標は、前示各商品を指定商品として設定登録されたものであるから、本件商標が付された該指定商品が取引される場合を想定すべきことは当然であって、本件商標をその指定商品に使用しないことを前提とするかのような主張は、それ自体失当というべきである。また、前示認定事実から、たとえ「フードプラス」店舗の所在地周辺地域の需要者に限ってみても、本件商標が周知著名であるとの事実を推認することはできず、他にこの点についての証拠はないから、需要者が本件商標と引用商標とを混同することがないとの主張を採用することもできない。

2  以上のとおりであるから、原告主張の本件決定取消事由は理由がなく、その他本件決定にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。

よって、原告の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中康久 裁判官 石原直樹 裁判官 清水節)

(別紙1)

本件商標

<省略>

(別紙2)

引用商標

<省略>

(別表)

原告商標一覧表

符号 登録番号 出願日 設定登録日 指定商品

A 第4076401号 平成7年10月13日 平成9年10月31日 第2類 塗料、染料、顔料、印刷インキ(「謄写版用インキ」を除く。)、謄写版用インキ、絵の具、塗装用・装飾用・印刷用又は美術用の非鉄金属はく及び粉、塗装用・装飾用・印刷用又は美術用の貴金属はく及び粉、防錆グリース、壁紙剥離剤、媒染剤、木材保存剤、カナダバルサム、コパール、サンダラック、シェラック、松根油、ダンマール、ヤスチック、松脂

B 第4076402号 同上 同上 第7類 金属加工機械器具、ミシン、自動スタンプ打ち器、芝刈機、家庭用電気洗濯機、電気ミキサー、電動式カーテン引き装置、陶工用ろくろ、塗装機械器具

C 第4102090号 同上 平成10年1月16日 第24類 織物、メリヤス生地、フェルト及び不織布、オイルクロス、ゴム引防水布、ビニルクロス、ラバークロス、ろ過布、布製身の回り品、ふきん、かや、敷き布、布団、布団カバー、布団側、まくらカバー、毛布、織物製壁掛け、織物製ブラインド、カーテン、テーブル掛け、どん張、シャワーカーテン、遺体覆い、経かたびら、黒白幕、紅白幕、布製ラベル、ビリヤードクロス、のぼり及び旗(紙製のものを除く)

D 第4049136号 同上 平成9年8月29日 第5類 薬剤、医療用油紙、衛生マスク、オブラート、ガーゼ、カプセル、耳帯、眼帯、生理帯、生理用タンポン、生理用ナプキン、生理用パンティ、脱脂綿、ばんそうこう、包帯、包帯液、失禁用おしめ、乳児用粉乳、乳糖、はえ取り紙、防虫紙

平成9年異議第90125号

商標登録異議の申立てについての決定

東京都豊島区東池袋3丁目1番1号

商標権者 株式会社西友

東京都新宿区高田馬場1-5-19 KFビル7階 峯特許事務所

代理人弁理士 峯唯夫

ドイツ連邦共和国ビルケンヴェルダー トリフトヴェーク 21-26

登録異議申立人 フランコテユープーボスタリア アクチエンゲゼルシャフト ウント コンパニー

東京都港区西新橋2丁目7番4号 西新橋20森ビル10階ドクトル・ゾンデルホフ法律事務所

代理人弁護士 加藤義明

東京都港区西新橋2丁目7番4号 西新橋20森ビル10階ドグトル・ゾンデルホフ法律事務所

代理人弁護士 清水三郎

登録第4007020号商標の登録について、次のとおり決定する。

結論

登録第4007020号商標の指定商品中「基本単位計量器、誘導単位計量器、電気通信機械器具、電子応用機械器具、金銭登録機、硬貨の計数用又は選別用の機械、作業記録機、写真複写機、手動計算機、製図用又は図案用の機械器具、タイムスタンブ、タイムレコーダー、電気計算機、パンチカードシステム機械、票数計算機、ビリングマシン、郵便切手のはり付けチェック装置、計算尺」についての登録を取り消す。

理由

1 本件商標

本件登録第4007020号商標(以下、「本件商標」という。)は、別紙(1)に表示したとおりの構成のものであり、平成7年10月13日登録出願、商品の区分第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成9年6月6日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立てがされた指定商品

第9類「基本単位計量器、誘導単位計量器、電気通信機械器具、電子応用機械器具、金銭登録機、硬貨の計数用又は選別用の機械、作業記録機、写真複写機、手動計算機、製図用又は図案用の機械器具、タイムスタンプ、タイムレコーダー、電気計算機、パンチカードシステム機械、票数計算機、ビリングマシン、郵便切手のはり付けチェック装置、計算尺」

3 取消理由の通知

本件商標と登録異議申立人の引用する登録第3269592号商標(以下、「引用商標」という。別紙(2)に表示したとおりの構成のもの。)の図形部分とは、欧文字の「F」と「P」の組合わせよりなるものと容易に認識されるところ、両者を子細に比較対照すれば相違する点がないでもないが、両者は、着想、構図等その構成の軌を一にするものである。

そうとすれば、本件商標と引用商標の図形部分を時と処を異にして観察した場合には、互いに相紛れるおそれがあるものといわざるを得ないから、本件商標と引用商標とは、外観において類似する商標と認められるものであり、また、本件商標の指定商品中の前記「登録異議の申立てがされた指定商品」は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品を包含しているものと認めることができる。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである旨の商標登録の取消理由を通知した。

4 商標権者の意見

商標権者は、概略次のように主張し、証拠方法として乙第1号ないし乙第7号証(枝番号を含む。)を提出している。

本件商標及び引用商標から「エフピー」の称呼は発生しない。そして両商標は図形として構成が異なり、見誤るおそれはなく非類似であるである。

(1) 他区分での審査例

本件商標と引用商標とは非類似と確信するが、これは出願人の独自の見解ではない。以下のとおり引用商標と指定商品において抵触する区分において、審査において非類似と認定されている。

第1類:登録第3367003号、第2類:登録第4076401号、第4類:登録第4071922号、第5類:登録第4049136号、第6類:登録第4043115号、第7類:登録第4076402号、第24類:登録第4102090号

上記中、2、7、24類では、引用商標と同一態様の商標を引用した拒絶理由通知を受け、意見書の提出により登録に至っている。(乙第1号証ないし3号証)。

(2)称呼の発生

本件商標は、審査官の想像されたとおり、欧文字FとPとをモチーフとしてデザインされたものである。

しかしながら、従来の審査審判においては、デザイン化の進んだモノグラム文字は、図形としてのみ認識され、特定の称呼、観念は生じないものとされている。

本件商標は特定の称呼観念の生じることのない図形商標としてのみ認識されるもので、「エフピー」という称呼が生じることはない。

また、本件商標から特定の称呼が発生しないのと同様の理由で、引用商標も図形商標としてのみ認識され、特定の称呼は生じない。

(3)図形としての観察

本件商標と引用商標とを図形として比較する。

まず、文字をモチーフとしたいわゆるモノグラム商標の類否判断においては、モチーフとなる文字の共通性をもって類似と認定することはできない。このことは多くの審査審判例で確立した見方であり、本件においてその例外とすべき理由はない。

そこで、図形として観察した場合の共通点、差異点を示すと次のようにいうことができる。

(共通点)

<1>共に欧文字FとPとを横に結合させた態様であること。

<2>共に肉太で、直線を多用した態様であること。

(差異点)

<1>本件商標は、FとPが構成要素として完全に独立しており、文字の構成要素を全く共有していないが、引用商標は、Fの文字とPの文字とが重なり合っており、文字の構成要素の一部を共有している。

特に、引用商標においてPの縦線がFの横線中央部まで重ねられている点は極めて特徴的な構成である。

<2>本件商標は、Fの文字を「乗せ文字」で表し、Pの文字を「抜き文字」で表している。そして、Pの文字の輪郭線によって、Fの文字とPの文字とが一体的なまとまりを構成している。

一方、引用商標は、Fの文字とPの文字は濃淡で分けられており、Fの文字の色が薄く、Pの文字の色が濃い。濃淡の位置は本件商標と逆である。

そしてまた、Fの文字は色が薄いものの「抜き文字」ではない。

<3>本件商標は、Fの文字の横線間の間隙、及びPの文字のループ内の間隙がそれぞれ独立しており、FとPの独立性が高い態様であるのに対して、引用商標はFの文字の間隙とPの文字の間隙とがスリット状につながった態様であり、このスリット状のつながりによって、Fの文字とPの文字とが一体的なまとまりを構成している。

これらの共通点、差異点を検討すると、本件商標と引用商標とは、FとPを横に並べて表しているというモチーフにおいては共通するものではあるが、二つの文字を結合させるその具体的な構成態様においては大きな差異があり、構成の軌を一にするものということはできない。

そして、取引の場においても、FとPの文字のまとまり方の違い、特にF、Pの間隙が独立しているか連続しているか、二つの文字が横に並んでいるか重ねられているか、乗せ文字と抜き文字の結合かどうか、という点は即座に認識できるものであり、紛れるものではない。

したがって、本件商標と引例商標とは外観上容易に識別できるものであり、非類似である。

(4)むすび

以上のとおり、本件商標は特定の称呼が生じないものであるから引用商標とは称呼上非類似であり、モノグラム文字の構成態様において引用商標とは容易に区別できるものであるから、外観上も非類似である。

5 当審の判断

商標権者は、他区分での登録例を示し、本件商標と引用商標とは、審査において非類似と認定されている旨主張する。

しかしながら、これらの登録例のうち、登録第4076401号、第4076402号及び第4102090号は、審査において非類似と認定されたとする他人の登録商標と、その指定商品が非類似の関係にあると認められる。

そして、これ以外の登録例については、いかなる商標との比較で審査において非類似としたか明らかにされていでない。

そうすると、商標権者の前記主張は、採用すべき根拠がないものである。

つぎに、本件商標と引用商標を比較すると、本件商標を構成する図形と独立した識別標識部分とみられる引用商標中の図形部分は、共に欧文字のFとPを結合させデザインした〓のと容易に理解されるものであって、その全体の形が極めて似ており、濃淡の差異をもってFとPの部分を表している点においても共通しでいる。 そして、本件商標を構成する図形と引用商標中の図形部分は、商標権者が主張するような構成の差異はあっても、前記した共通性があるため、その外観全体から受ける印象は極めて近いといえるし、時と処を異にして接する場合、そのFとPの部分の濃淡がどちらであったかまで記憶していないのが、むしろ普通とみられるものである。

そうすると、本件商標と引用商標とは、外観において紛らわしく、類似する商標といわざるを得ない。

また、本件商標の指定商品中の前記「登録異議の申立てがされた指定商品」は、引用商標の指定商品中に含まれている商品と同一又は類似の商品と認めることができる。

したがって、通知した取消理由は、妥当なものであるから、本件商標登録は、商標法第43条の3第2項の規定に基づき、結論掲記のとおり、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

平成10年6月8日

審判長 特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

別紙

<省略>

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